戦国BASARA・腐向け・サスダテ中心・本館(サササケ)を見ている方向け。
女体化とか幼児化とか遠慮なく出てきますのでご注意ください。
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またしてもコタミネーターです。
小太郎がタ ーミネーターだからコタミネーターなのに、小太郎という名前が前回まで一切出てこなかったコタミネーターです。
(∥_ゝ∥)「……」
前回分はこの下、それ以前の分はnovelにまとまってます。
注意事項
※政宗さまが女性
※政宗さまが幸村の母上
※幸村と元親は少年世代
※佐助については聞かない約束
下の分も後ほど追記に畳みます。スクロールバー長いままでスミマセン;(畳みました!)
(サスダテプチの原稿もやってます!もうすぐそこですよ!!)
▼▼▼
コンコンコン。
「元就ー、晩飯だー」
ノックをすると、「……む、」と返事ともつかない返事が返る。
(こりゃ聞こえてねえな)
おいおい、まったく大人のくせによぉ。
ライオンめいた銀髪を細い腕でガシガシと掻いて、少年は、長曾我部元親は、さらに強くノックする。
ドンドンドン!
――田舎でよかった。
「元就!毛利さんよ!晩飯がさめるだろうが!今すぐ出てこねえとぜんぶ運びこむからな!?」
叫んでやれば、ガタ!と立ち上がる音、ダカダカと歩み寄る気配。扉が内側にバッと開く。
白い顔が、さらに血色をなくして目の下にクマ、地獄から這い上がってきた幽鬼のごとき形相で元親を見下ろした。
「……メニューは」
「しょ、ショウガ焼きとかだな」
「……む」
うなずいて、元就は部屋からふらりと歩み出る。
歩くことすら少ない生活のせいか酷く細い体で、顔も――冷たく整っているのに、それがよけい幽霊めいて見える男だ。
その男と差し向かいに座り、元親は食卓に「いただきます!」と手を合わせた。
「馳走になる……」
ぼそ、とつぶやいて、元就も箸をとる。
元親が元就と暮らし始めたのはほんの四ヶ月前、五年生になる春休みの少し前のこと。
そのころ元親がいたのは、死んだ父親の親類だという一家だった。婆様(これが元親の大伯母なのだと説明されたが、結局まともに口をきいたことはほとんどない)と、その息子夫婦と、男の子と女の子がいて、引き取られて日の浅い、左目の見えない元親を持て余したように――一言でも無駄な口をきけば、元親のいる場所から火がつきすべてが崩れ去るとばかりに、息を潜めて暮らしていた。
物心ついた時には、親のいない子どもが集められた『子どもの家』にいて、園長とお手伝いさんと、年長の元親を慕う年下ばかり、それなりに楽しく過ごしていたのが――『財政難』とやらばっかりに。
何よりもため息をつかされたのは食事時だ。集まったら集まったでピリピリとした空気になる、それはまだいいとして、そもそも集まることがない。『お父さん』は仕事、『お母さん』は『お祖母さん』のお世話、子どもたちは塾か習い事で、そろうということがないのだ。
――すげーな、ワイドショーで見た『最近のご家庭』みたいじゃねえ?
と呑気に考えていたのも最初だけで、だんだんと気詰まりが喉に詰まり腹を圧迫し始めた、そんなある日。
『貴様が長曾我部の息子か』
男は、元親の両親の友人だと言った。
『家長と大伯母とやらには話をつけてある』
男は、これは元親の両親の、本来の希望だったのだと言った。
『貴様に拒否権はないが、聞きたいことがあれば述べてみよ』
男は、毛利元就と、名乗った。
元親は聞いた。
『あんた、メシはかならずいっしょに食うか?』
『……よかろう』
――ところが、これがまったく、よくなかった。
すぐに分かったのは、毛利元就という男が独り身で、日がな一日自室のコンピュータを相手に仕事をするということだ。食事は夕方に家政婦さんが来て、翌日分までを作ってくれる。それもどうやら、元親が来るとなって初めて雇ったらしい。今住んでいる家も長年ほったらかしたまま、ヨソの国でひとりで仕事をしていたのだという。
寝室にも仕事場にも大きな窓をつけて日の光をとりこんでいるためか、かろうじて朝にはちゃんと起きてくるが、珈琲を一杯飲んだが最後、食事のことなどまるで失念する。
――おいおい話が違うじゃねえか。
仕事が佳境に入ると『我は夜食だけでよいわ』などと言い出す元就を相手に、元親は断固として戦う覚悟を決めた。
あんたが最初に!いっしょに食うって約束したんだろうが!あんたが食わねえならおれがあんたのぶんまで食っちまうぞ!とーにょーびょーになってやるぞ!!ハンストするぞ!!ぐれるぞ!!
――『子どもの家』はもうない。大伯母の家なぞもってのほか。
元親には他に、帰る場所はないのだ。
追い出したけりゃ追い出しやがれ!とばかりに叫び続けて丸一日。
「……食べるのか、食べぬのか、ぐれるのか、」
どれか一つに絞れ。
額に手をあて疲れ切った顔で元就が訴えたところですかさず、元親は紙を出した。
「メシはいっしょに食いやがれ。しょ名しろ!」
男は一瞬、荒れ狂う波を背負ったような――そう錯覚するほどの、怒りとしか見えない表情を顔に浮かべて。
(あ、やべ、殺されるかも)
そう元親が思った瞬間、フッと息を吐き、表情を落とした。
「――ペンを寄越せ」
「お、おうよ」
床に座り込み、元親の手書きの誓約書に、『ぼくは元親と毎日、三食、いっしょにごはんを食べるとやくそくします。』と書かれた下に、『毛利元就』と書き込む。
「ハンコ押せよ。ボインでもいいぞ」
「チッ」
「あんた本当にエンリョなくしたうちすんのなー…」
醤油でつけられた親指の跡に満足して笑えば、元就は人形のような顔に、実に人形らしくない忌々しげな表情を浮かべた。
「……我が最初に、聞きたいことがあるかと言ったのは、進学のことや住む場所のことであったのだがな……」
「ああ?そんなんいきなり聞かれてもでてこねーよ」
「馬鹿チカが」
「だれがバカだ!」
「違う、……お前の父親、国親が、昔似たような宣誓書を作ってきたのだ」
『俺達に何かあったら息子を頼む』
『元就さんから一字もらって名づけました』
『サインしないと夏の海で干からびさせるぞー窓ふさいで日輪拝めなくするぞー海で日焼けしたら肌チリッチリだぞお前』
そんなことを、元親の両親は言ったらしい。
「あの馬鹿夫婦が……」
呟きうずくまる元就に、元親は慌ててティッシュの箱を探す。
「おいおい、泣くなよ」
「誰が泣くか」
顔を上げた男は、確かに泣いてはいなかったが、目が真っ赤に充血して余計に恐ろしい形相になっていた。
けれど元親には、それがちっとも、怖くはないのだ。
「うなれ、木騎一号!」
ちゅどーん、ががががが、と口で音をつけながら、元親は手元のコントローラーのスイッチを入れる。
木で出来た四つ足の、馬ともなんとも見えない不格好な絡繰りが、ガチャガチャと動きだした。
――夏休みの自由研究にしては、我ながらよくできている。
と、元親は得意げに鼻をこすった。
「課題ができているのはよく分かった。もう床につけ」
「あんたはまだ寝ないのかよ」
カタカタとキーボードを打ち続ける後ろ姿はこのところ、随分な深夜まで続いている。
眼鏡を右手で押し上げる間も、左手は休まない。
「……竹中に見せるまでに、暗号を複雑化しておきたい」
元就は今、竹中半兵衛という男に依頼されて、何かのプログラムを作っているのだという。
「なんだよ、むずかしくしねえと盗まれちまうのか?」
「いや。それもないではないが――壊そうという輩もいるのでな」
「ふーん」
資料が床から山積みにされた元就の部屋は、それでも元親がさらに散らかせるほど広い。南東に向った窓もそれだけ広い。今は夜の虫の鳴き声が響く窓から、昼は日の光が燦々とそそぎこんでいる。
「丈夫に作ってやれよ、お日さまなんだろ?」
――元就は、光合成でもしているのか?と問いたくなるほど太陽を好む。
今手がけているプログラムのことを聞いたときも、まず空の太陽を指さしたものだ。
『日輪を、大地を見つめる目と呼んだ詩人もいる。陽光のように地に降り注ぎ、常に全世界を見守り――観測するだけでなく、予測する。天変地異に備える知能へ、あらゆる策を授けよう』
名前は、まだ無いという。
――だがきっとこいつは、青空にちなんだ名になるのだろう。
「週末、晴れるよな」
「どうせ暑い日になる」
夏休みの宿題が終わったら、海に連れて行け。そう約束した。日記も算数ドリルも読書感想文も水彩画も自由研究も完璧だ。
完璧であるからして、二人は週末海に行く。
――昔、幸村と海で過ごしたことがある。
砂浜で、政宗と幸村の二人で、砂の城を造った。天守閣も堀も作って、堤を築き、抜け穴を掘り、ここに鉄砲隊を置くのだなどと笑いあったものだ。会話の内容はどうなんだいそれ、と後で慶次に言われたが、遊び疲れて二人でアイスクリームを食べながら――これが、普通の子どもの一日なんだろうかと、思った。
『楽しかったか?』
聞けば、幸村は、
『まさむねどのといっしょにござれば!』
と笑った。
――そんなことばかり思い出す。
(これから、人ひとり、殺そうってのにな)
エネルギー弾銃の工場を爆破した時とは訳が違う。
その男はまだ、何も作っていない。手がけているのはあくまで、人類のための環境改善を目的とした人工知能だ。
――だが、それが竹中半兵衛を通じた織田コーポレーションの依頼であることは、どうやら間違いない。
月が明るく、道の灯りが影を作る。その影から、政宗はスナイパーライフルの照準を合わせる。
山の陰に建つ家の広い窓、その奥の、演算機に囲まれた机。その前に座る、細身の男。写真にない眼鏡をかけているが、日本人形のようなその顔は間違いない。
毛利元就。
――武器を扱う織田ではなく、科学の力を求める豊臣ではなく、今、ただひとり、この男を殺せば、あんな未来はやってこない。
政宗の耳元に、心臓の音が鳴り響く。虫の声も風の音もすべて飲み干し、速度を増して。
『……それがしは、政宗どのを守りたいのでござる……』
(幸村に、)
人類でなく、ただ自分のために生きられる、未来を。
音が消えた。
窓の向こうの標的も、何か考え込むように動きを止めた。
――風が吹いた。
指が、引き金を引き絞る。
指が止まることなくキーボードを滑る。
――時折、手が足りぬように感じるほどに。
竹中半兵衛が寄越したプログラムは、元就の好奇心を極めてそそるものだった。数年前に没した明智光秀の研究室から出てきたが、他の者には解析も難しいという。
『これを君が開発するAIに応用できたなら、僕らにとっても大きな収穫だ』
是非にと請われて帰国した元就を待っていたのは、昔の腐れ縁がとうになくなっていたという事実と、その残された息子だけだったが――。
『おれは宿題おわったからな!あんたもさっさとかたづけろよ?』
日記も40日分書いたと得意げな元親の一番の力作は、電池で動く木馬である。馬の形には見えたいが、確かに木で出来ていて、スイッチをいれればよたよたと歩く。
――血は争えぬか。
気づけば手は止まっていた。
休止符を挟むべき頃合いだったのだろう。頭が止まってからでは遅い。
――風が吹いた。
カタン、と足下に何かが倒れて、考えるより早く腕を伸ばしていた。
(こんなところに置いたままで、壊れでもしたら)
――ガラスが割れる音がした。
その音を遠くに聞きながら、元就の手は少年が作った木馬をつかんでいた。
「……!」
痛みを凌駕する熱さが、左肩を襲う。
衝撃のまま机のそばに倒れ込んだ元就の後を追うように、散弾が一面の窓ガラスを打ち砕いた。
▲▲▲
つづく。
小太郎がタ ーミネーターだからコタミネーターなのに、小太郎という名前が前回まで一切出てこなかったコタミネーターです。
(∥_ゝ∥)「……」
前回分はこの下、それ以前の分はnovelにまとまってます。
注意事項
※政宗さまが女性
※政宗さまが幸村の母上
※幸村と元親は少年世代
※佐助については聞かない約束
下の分も後ほど追記に畳みます。スクロールバー長いままでスミマセン;(畳みました!)
(サスダテプチの原稿もやってます!もうすぐそこですよ!!)
▼▼▼
コンコンコン。
「元就ー、晩飯だー」
ノックをすると、「……む、」と返事ともつかない返事が返る。
(こりゃ聞こえてねえな)
おいおい、まったく大人のくせによぉ。
ライオンめいた銀髪を細い腕でガシガシと掻いて、少年は、長曾我部元親は、さらに強くノックする。
ドンドンドン!
――田舎でよかった。
「元就!毛利さんよ!晩飯がさめるだろうが!今すぐ出てこねえとぜんぶ運びこむからな!?」
叫んでやれば、ガタ!と立ち上がる音、ダカダカと歩み寄る気配。扉が内側にバッと開く。
白い顔が、さらに血色をなくして目の下にクマ、地獄から這い上がってきた幽鬼のごとき形相で元親を見下ろした。
「……メニューは」
「しょ、ショウガ焼きとかだな」
「……む」
うなずいて、元就は部屋からふらりと歩み出る。
歩くことすら少ない生活のせいか酷く細い体で、顔も――冷たく整っているのに、それがよけい幽霊めいて見える男だ。
その男と差し向かいに座り、元親は食卓に「いただきます!」と手を合わせた。
「馳走になる……」
ぼそ、とつぶやいて、元就も箸をとる。
元親が元就と暮らし始めたのはほんの四ヶ月前、五年生になる春休みの少し前のこと。
そのころ元親がいたのは、死んだ父親の親類だという一家だった。婆様(これが元親の大伯母なのだと説明されたが、結局まともに口をきいたことはほとんどない)と、その息子夫婦と、男の子と女の子がいて、引き取られて日の浅い、左目の見えない元親を持て余したように――一言でも無駄な口をきけば、元親のいる場所から火がつきすべてが崩れ去るとばかりに、息を潜めて暮らしていた。
物心ついた時には、親のいない子どもが集められた『子どもの家』にいて、園長とお手伝いさんと、年長の元親を慕う年下ばかり、それなりに楽しく過ごしていたのが――『財政難』とやらばっかりに。
何よりもため息をつかされたのは食事時だ。集まったら集まったでピリピリとした空気になる、それはまだいいとして、そもそも集まることがない。『お父さん』は仕事、『お母さん』は『お祖母さん』のお世話、子どもたちは塾か習い事で、そろうということがないのだ。
――すげーな、ワイドショーで見た『最近のご家庭』みたいじゃねえ?
と呑気に考えていたのも最初だけで、だんだんと気詰まりが喉に詰まり腹を圧迫し始めた、そんなある日。
『貴様が長曾我部の息子か』
男は、元親の両親の友人だと言った。
『家長と大伯母とやらには話をつけてある』
男は、これは元親の両親の、本来の希望だったのだと言った。
『貴様に拒否権はないが、聞きたいことがあれば述べてみよ』
男は、毛利元就と、名乗った。
元親は聞いた。
『あんた、メシはかならずいっしょに食うか?』
『……よかろう』
――ところが、これがまったく、よくなかった。
すぐに分かったのは、毛利元就という男が独り身で、日がな一日自室のコンピュータを相手に仕事をするということだ。食事は夕方に家政婦さんが来て、翌日分までを作ってくれる。それもどうやら、元親が来るとなって初めて雇ったらしい。今住んでいる家も長年ほったらかしたまま、ヨソの国でひとりで仕事をしていたのだという。
寝室にも仕事場にも大きな窓をつけて日の光をとりこんでいるためか、かろうじて朝にはちゃんと起きてくるが、珈琲を一杯飲んだが最後、食事のことなどまるで失念する。
――おいおい話が違うじゃねえか。
仕事が佳境に入ると『我は夜食だけでよいわ』などと言い出す元就を相手に、元親は断固として戦う覚悟を決めた。
あんたが最初に!いっしょに食うって約束したんだろうが!あんたが食わねえならおれがあんたのぶんまで食っちまうぞ!とーにょーびょーになってやるぞ!!ハンストするぞ!!ぐれるぞ!!
――『子どもの家』はもうない。大伯母の家なぞもってのほか。
元親には他に、帰る場所はないのだ。
追い出したけりゃ追い出しやがれ!とばかりに叫び続けて丸一日。
「……食べるのか、食べぬのか、ぐれるのか、」
どれか一つに絞れ。
額に手をあて疲れ切った顔で元就が訴えたところですかさず、元親は紙を出した。
「メシはいっしょに食いやがれ。しょ名しろ!」
男は一瞬、荒れ狂う波を背負ったような――そう錯覚するほどの、怒りとしか見えない表情を顔に浮かべて。
(あ、やべ、殺されるかも)
そう元親が思った瞬間、フッと息を吐き、表情を落とした。
「――ペンを寄越せ」
「お、おうよ」
床に座り込み、元親の手書きの誓約書に、『ぼくは元親と毎日、三食、いっしょにごはんを食べるとやくそくします。』と書かれた下に、『毛利元就』と書き込む。
「ハンコ押せよ。ボインでもいいぞ」
「チッ」
「あんた本当にエンリョなくしたうちすんのなー…」
醤油でつけられた親指の跡に満足して笑えば、元就は人形のような顔に、実に人形らしくない忌々しげな表情を浮かべた。
「……我が最初に、聞きたいことがあるかと言ったのは、進学のことや住む場所のことであったのだがな……」
「ああ?そんなんいきなり聞かれてもでてこねーよ」
「馬鹿チカが」
「だれがバカだ!」
「違う、……お前の父親、国親が、昔似たような宣誓書を作ってきたのだ」
『俺達に何かあったら息子を頼む』
『元就さんから一字もらって名づけました』
『サインしないと夏の海で干からびさせるぞー窓ふさいで日輪拝めなくするぞー海で日焼けしたら肌チリッチリだぞお前』
そんなことを、元親の両親は言ったらしい。
「あの馬鹿夫婦が……」
呟きうずくまる元就に、元親は慌ててティッシュの箱を探す。
「おいおい、泣くなよ」
「誰が泣くか」
顔を上げた男は、確かに泣いてはいなかったが、目が真っ赤に充血して余計に恐ろしい形相になっていた。
けれど元親には、それがちっとも、怖くはないのだ。
「うなれ、木騎一号!」
ちゅどーん、ががががが、と口で音をつけながら、元親は手元のコントローラーのスイッチを入れる。
木で出来た四つ足の、馬ともなんとも見えない不格好な絡繰りが、ガチャガチャと動きだした。
――夏休みの自由研究にしては、我ながらよくできている。
と、元親は得意げに鼻をこすった。
「課題ができているのはよく分かった。もう床につけ」
「あんたはまだ寝ないのかよ」
カタカタとキーボードを打ち続ける後ろ姿はこのところ、随分な深夜まで続いている。
眼鏡を右手で押し上げる間も、左手は休まない。
「……竹中に見せるまでに、暗号を複雑化しておきたい」
元就は今、竹中半兵衛という男に依頼されて、何かのプログラムを作っているのだという。
「なんだよ、むずかしくしねえと盗まれちまうのか?」
「いや。それもないではないが――壊そうという輩もいるのでな」
「ふーん」
資料が床から山積みにされた元就の部屋は、それでも元親がさらに散らかせるほど広い。南東に向った窓もそれだけ広い。今は夜の虫の鳴き声が響く窓から、昼は日の光が燦々とそそぎこんでいる。
「丈夫に作ってやれよ、お日さまなんだろ?」
――元就は、光合成でもしているのか?と問いたくなるほど太陽を好む。
今手がけているプログラムのことを聞いたときも、まず空の太陽を指さしたものだ。
『日輪を、大地を見つめる目と呼んだ詩人もいる。陽光のように地に降り注ぎ、常に全世界を見守り――観測するだけでなく、予測する。天変地異に備える知能へ、あらゆる策を授けよう』
名前は、まだ無いという。
――だがきっとこいつは、青空にちなんだ名になるのだろう。
「週末、晴れるよな」
「どうせ暑い日になる」
夏休みの宿題が終わったら、海に連れて行け。そう約束した。日記も算数ドリルも読書感想文も水彩画も自由研究も完璧だ。
完璧であるからして、二人は週末海に行く。
――昔、幸村と海で過ごしたことがある。
砂浜で、政宗と幸村の二人で、砂の城を造った。天守閣も堀も作って、堤を築き、抜け穴を掘り、ここに鉄砲隊を置くのだなどと笑いあったものだ。会話の内容はどうなんだいそれ、と後で慶次に言われたが、遊び疲れて二人でアイスクリームを食べながら――これが、普通の子どもの一日なんだろうかと、思った。
『楽しかったか?』
聞けば、幸村は、
『まさむねどのといっしょにござれば!』
と笑った。
――そんなことばかり思い出す。
(これから、人ひとり、殺そうってのにな)
エネルギー弾銃の工場を爆破した時とは訳が違う。
その男はまだ、何も作っていない。手がけているのはあくまで、人類のための環境改善を目的とした人工知能だ。
――だが、それが竹中半兵衛を通じた織田コーポレーションの依頼であることは、どうやら間違いない。
月が明るく、道の灯りが影を作る。その影から、政宗はスナイパーライフルの照準を合わせる。
山の陰に建つ家の広い窓、その奥の、演算機に囲まれた机。その前に座る、細身の男。写真にない眼鏡をかけているが、日本人形のようなその顔は間違いない。
毛利元就。
――武器を扱う織田ではなく、科学の力を求める豊臣ではなく、今、ただひとり、この男を殺せば、あんな未来はやってこない。
政宗の耳元に、心臓の音が鳴り響く。虫の声も風の音もすべて飲み干し、速度を増して。
『……それがしは、政宗どのを守りたいのでござる……』
(幸村に、)
人類でなく、ただ自分のために生きられる、未来を。
音が消えた。
窓の向こうの標的も、何か考え込むように動きを止めた。
――風が吹いた。
指が、引き金を引き絞る。
指が止まることなくキーボードを滑る。
――時折、手が足りぬように感じるほどに。
竹中半兵衛が寄越したプログラムは、元就の好奇心を極めてそそるものだった。数年前に没した明智光秀の研究室から出てきたが、他の者には解析も難しいという。
『これを君が開発するAIに応用できたなら、僕らにとっても大きな収穫だ』
是非にと請われて帰国した元就を待っていたのは、昔の腐れ縁がとうになくなっていたという事実と、その残された息子だけだったが――。
『おれは宿題おわったからな!あんたもさっさとかたづけろよ?』
日記も40日分書いたと得意げな元親の一番の力作は、電池で動く木馬である。馬の形には見えたいが、確かに木で出来ていて、スイッチをいれればよたよたと歩く。
――血は争えぬか。
気づけば手は止まっていた。
休止符を挟むべき頃合いだったのだろう。頭が止まってからでは遅い。
――風が吹いた。
カタン、と足下に何かが倒れて、考えるより早く腕を伸ばしていた。
(こんなところに置いたままで、壊れでもしたら)
――ガラスが割れる音がした。
その音を遠くに聞きながら、元就の手は少年が作った木馬をつかんでいた。
「……!」
痛みを凌駕する熱さが、左肩を襲う。
衝撃のまま机のそばに倒れ込んだ元就の後を追うように、散弾が一面の窓ガラスを打ち砕いた。
▲▲▲
つづく。
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