戦国BASARA・腐向け・サスダテ中心・本館(サササケ)を見ている方向け。
女体化とか幼児化とか遠慮なく出てきますのでご注意ください。
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5A式シリーズのお正月話を載せます。不定期連載になります。
一昨年の暮れくらいに、『連載その一だけでもメモに載せられれば…』とか言ってた例のアレです。一昨年か。
一応、オレンジママレードからブッシュドノエルまでで三部作、このお正月の話からまた三部作、その後ひとつかみっつか書いたらきりよく完結させられるんじゃないかなあ、というぼんやり遠大な計画をたてています。まずこの三部作がどれくらいかかるか見当がつかないのですが。タイトルさえはっきり決まっていないのですが。
(ちなみに、予約投稿できてなかったのは貝島の操作ミスでした)
こんなシリーズですが、お付き合いくださる方は追記よりどうぞ…!
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冷たい空気が甘かった。
夜の中で、雪明かりにその人の白い顔が浮かび上がる。
朱色の小さな杯が近づいて唇をほの紅く染めるかに見えた。
細められた目がこちらを向く。
杯を差し出す。
その朱色の杯を支えた、白い手をとった。
朱色は雪に落ちてサクリとかすかな音をたてる。
唇に押し当てた細い指は、雪のようだった。
――…冷たい。
つぶやけば、その人は喉で笑った。
――Indeed,お前もだ。
いつのことだろう、思い出せない。確かに握った白い指。雪のような。
(いっそ、融けてしまえばいい)
強く強く願ったのは、確かに自分だったのに。
つまり全ては雪のせいだった。
――あるいは、“お正月”という言葉の魔力かもしれない。
いやいやタワーにいたころ一度新年を迎えたことがあったが、こんなことにはならなかったはずだ。そのはずだ!
とサスケは考えた。
サスケが――BASARAタワー公式名称でいう甲斐原理統合5A式ヒューマノイドが、こうして体を持って一月を経験するのも、これで二度目である。
去年の今頃はタワーの研究室にいて、彼の作り主であるマサムネ・T・ダテ博士と向かい合い、お雑煮という――焼き餅に香ばしい魚や口当たりのいい野菜がたっぷりの、お吸い物をすすっていたはずだ。あれは大層美味しかった。
このヒューマノイドにとってダテ博士こと政宗の作る料理は何もかもが“おいしい”のだが、ともあれ5A式のAIにお正月とは部屋で静かにつつましく。そういうものと認識されていた。
それが、今年は。
「いいかい、幸村はたぶん守備から動かない。こっちも守るのは俺だ。体がでかくなきゃね。小太郎がどう動くか分からないけどとにかくサスケが――」
虎縞の手袋が、雪に回り込む矢印を描く。
「生垣の側から強襲して幟を倒すって寸法だ」
雪の壁。雪の山に立つ幟。伊達研究所の庭に出現した戦場。
――なぜ今年はこんなことに、とその答えを求めるなら、やはりこの男のせいなのだろう。
「…そう上手くいく?」
体がでかいって的もでかいってことだよねえ。
サスケは目をじとりと半目にして、マフラーに毛糸の帽子、完全防備の前田慶次を見上げた。
「とにかくやるしかないよ。俺も謙信と約束しちゃったしね」
「けーじさんってそういうの多いよねー」
否、好き好んでこの流れに持ってきているのだろう。そう感じるからサスケはますます呆れた目になる。
――呆れつつ、つき合ってあげるしかないか、と思わされてしまうから不思議だ。これが幾百の子どもを相手にする小児科医の業なのだろうか。
あるいは自分自身の性格ゆえであるという可能性に、サスケは気づいていない。
「開戦まであと三十秒、…二十秒、…十、九、八、」
慶次の腕時計を覗きこみながら深緑の手袋で、積み上げられた雪球をふたつつかむ。
「五、四、三、ニ、一、」
ゼロの声を聞かずに駆け出した。
――旗を倒されれば負け。攻撃は雪球のみ、身体に当てられた者は退場。
真田の声を頭にくりかえし、迷彩模様のブーツで白い雪を蹴る。
赤い旗の陣地にたどりつき雪の壁のうしろに回りこんで、サスケは目を瞬かせた。
紺の毛糸帽がかぶせられたスノーマンだけが立ちつくしている。
(隠れてるかな?)
幟の支柱めがけて雪球をえいやと投げつけ、サスケはさっと壁のうしろに身を隠した。
反撃はない。
――まさか。
「ちょ、幸村それあり!?」
慶次の叫び声が聞こえた。
サスケは飛びだして、赤い幟の間近から雪球を放った。
「Hey,boys」
ハスキーヴォイスが白い戦場に響く。
振り向けば、蒼い通信端末を片手にテラスに立った政宗が――巨大な雪玉に押しつぶされた慶次と青い旗、無言でハイタッチ中の幸村と小太郎、そして自分のうしろに倒れた赤い旗まで視線を走らせて、肩をすくめた。
「上杉教授はDr.ホウジョウに合流して躑躅ヶ崎Areaに向かったそうだ」
だから、みんなそろって信玄公の屋敷に行きゃあいいとさ。
「And then?年始回りの順番決定Death matchはどっちの勝ちだ?」
助手席でシートベルトをしめながら政宗は、運転席の慶次に――と言うより、ダテ研究所のAIに直結させた通信端末に問いかけている。
伊型人工知能SKK、通称『小十郎』は、けれど音声を発する様子がない。
――慶次さんがいるからだろうか、ヤクザ口調に似合わず人見知りだ。
5A式は同じ人工知能のよしみで気安く考えた。
「コンマの差で慶次チームか」
モニターに表示されたのだろう、かわりに政宗がそう口にしてクツクツ笑っている。
「ええ、そうだったのかい?」
とんきょうな声を上げたのは慶次である。
「分かんなかったよ…幸村と小太郎のどでかい雪玉で前見えなくなったからさ」
「いつき殿が教えてくれた攻守一体の秘策、『ゆきだるまごーろごろ大作戦』にござる」
きりりと勇ましい眉で幸村が答えた。いつきというのはBASARAタワーの学舎に在籍する十ほどの少女で、十九の政宗の――おそらくさらに九歳年上の幸村にとっても、後輩ということになる。
――さすがはサナダの旦那、どんな時でも全力だ。大人気ない。
ディフェンスのための雪壁がごっそり無くなっていた跡を思い出し、サスケはうんうんと頷いた。
政宗も感心したようにうなずいて、ふと首をかしげた。
「Ah……それは、雪合戦なのか?」
『閃』と呼ばれるこの島にはBASARAタワーを中心に、いくつかの学術都市と緑地居住区が存在する。
今サスケたちが向かうのは第六緑地居住区“甲”の躑躅ヶ崎エリア。第三緑地居住区“奥”の青葉エリアから、車でともあれ最寄の高速チューブに乗ってしまおう――と、運転席の慶次と助手席の政宗が話している。
サスケは後部座席で窓にぺたりと額をつけた。
コートにマフラー、手袋と、着込んだはいいが車の中では随分熱い。透明な窓の向こうは白い雪景色なのに、シリカ樹脂の板はわずかにひやりとしただけだった。
「まさむねー、窓あけていい?」
ふりむけば、幸村をはさんだ向こう側で小太郎も同じように窓にはりついている。
「あ?…ああ。SkyTube入るまでな」
政宗の掠れ声を合図に、窓際のスイッチをすべらせた。
背後で小太郎の方の窓も開く気配がして、ゴウ、と隙間風が頭の上を通り過ぎる。
「――雪が降りはじめたか?」
茶色い髪に一瞬で雪埃をまとわりつかせた幸村が、落ち着いた声でつぶやいた。
「あ。旦那、ごめん」
「……」
小太郎が申しわけなさそうに窓を閉めなおす。
「む。気にするな。開けておけ」
「いや待てDr.サナダ。雪降ってんなら車の中がえらい事になる」
「っつーかさ、さっき寒い寒い言って小太郎にまでマフラーぐるぐるしてたの、サスケじゃないっけ?」
慶次が軽い声で指摘するのに、サスケはあははと笑って窓を閉めた。
「耳も鼻もさっきまでキンキンだったんだけどねー」
ドア閉めたら途端に暑くなったの。
サスケの答えに政宗が「いつもより人数が多いからな」と答え、ミラーの中でわずかに眉をひそめる。
「エネルギー効率がいいのは悪かねぇが、高速法の車全気密基準はもーちっと…何とかなんねぇもんか」
あの案件、出したの竹中だろ?
と、慶次に向けられた言葉の、最後のひと言だけがサスケの耳を掠めた。
「竹中…ハンベさん?」
「Yes,Dr.タケナカ――半兵衛な」
竹中半兵衛と言えばサスケもタワーで会ったことのある、妙にこぎれいな顔をした博士である。もちろん政宗だって美人だし毛利さんだって相当だ、とサスケは認識しているが――タケナカ博士はより中性的と言うか、異国の人形めいている。
不健康なくらい白い顔をよけいに白く見せる白衣と、紫縁の眼鏡と、ウェーブのかかったプラチナブロンド。
『やあ、政宗くん』
にっこり笑って政宗に声をかけ、ちらりとかたわらのサスケに目をやると。
『――君、相変わらずお人形さんの研究を続けているのかい?』
などといきなり言ってみせた、見かけによらぬ猛者である。
――何がすごいって、ただの嫌味にせよ何にせよ、この政宗相手に喧嘩をふっかけるのだからすごい。
「あの人、何の博士なの?」
ダテ博士の研究に口出しするほどだ、少なくとも医療関係か生体科学辺り――と想定していたその耳に、「都市計画」という言葉が届いて過ぎ去った。
「…は」
「――Ah,それとも豊臣のPartnerなんだから」
「豊臣殿と言えば建築力学でござるな」
真田の口ぞえにサスケはさらに目を白黒させて、記憶を辿った。
――BASARAタワーの有名どころについては、昔サナダの旦那が自分のAIにひと通りインプットしてくれたはず。
(……)
(うん、無理。膨大すぎてほとんど忘れた)
そもそも興味のない情報は片端からゴミ箱行きになっているサスケのAIである。
興味のある情報は、イコール伊達政宗に結びつけられた何かである。
つづく
