戦国BASARA・腐向け・サスダテ中心・本館(サササケ)を見ている方向け。
女体化とか幼児化とか遠慮なく出てきますのでご注意ください。
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政宗様のお誕生日ですね!
(史実の日付的な意味で)
今年は前から続きをと思っていた、現代パラレルのにょたむね様のシリーズで書きました。
同シリーズの『三日月の夏』みたいに単品にしたかったのですが、今回は政宗さまのお誕生日からはじまって、しばらく続くお話のつもりです。続きが書けたらちゃんと掲載する所存。
というわけで、政宗様誕生日おめでとーう!!
「政宗さんが十九になったら、――またプロポーズしてもいい?」
ふと、口をついて出た言葉だった。
口にするまでそんなことを言う気はまるでなかった。
佐助の言葉を聞いた政宗は――今日十八歳になった彼女は、切れ長に吊り上った猫のような左目を見開いて、まじまじと佐助を見る。唇は、何か言いたげにわずかに開いて、きゅっと噛まれた。
その全身から『何言ってんだテメエ』という声が聞こえる気がして、佐助はへらりとゆるく笑う。
政宗はその笑顔に何を見たのか、目をそらし唇をとがらせた。
「…Noだったらどうするんだ」
今すぐその可愛い唇にキスをします。
と、そんな答えが脳裏にどーんと現れて、佐助は眉間に手のひらを押し当てた。
(いやいや、落ち着け自分)
アイスコーヒーのグラスに触れていた手は濡れて冷たい。
うーん、と考え込むように唸ったのをどう思ったか、政宗は左目でじっと佐助を見つめている。
怒ったように結ばれた唇と、挑むように睨みつける目。右目を目立たない眼帯と前髪で隠した顔は、作りが美しいだけに迫力があって、けれどそれが、佐助の目にはなんとも可愛らしく映る。
――十八になったばかり。
いつものショートカットも黒髪が細い首筋に少しかかるほどに、夏らしくさっぱりと切っているのが、少年のようにも見えた。一方で白い麻のノースリーブシャツから伸びる腕も、ハーフジーンズの脚も、瑠璃紺のキャミソールが垣間見える胸元も、少年と見間違うには少し無理がある。
――どんどんきれいになるなあ。
とは、まるで父親のような視線だ。
照明の控えめな喫茶店、八月の日差しは大きな窓の外にまぶしい。
政宗の肌にのる光がひときわ白く見えた。
「…政宗さんにね」
「、ああ」
「ノーって言われても嫌だって言われても、たぶん絶対、俺はまたああいうこと言うと思うから」
少しでも正直に、と考えながら佐助は言葉を選ぶ。
「覚悟しといて欲しいなあって」
「……、」
――ひと言ひと言がつみ上がるたびに、政宗の顔が紅くなるのはどういうわけだろう。
ひょっとして怒っているのだろうか。
その華奢な手の中では哀れなアヒルがおにぎりにされている。
ついさっき佐助が贈った小さなぬいぐるみだ。温かみのある桃色の、やわやわとした毛並みをして、触れると手に優しい。
色も種類も佐助にとってはどうでもいいことで、ただただ触れた柔らかさだけで選んだから、正しいあつかわれ方だった。
――優しいものだけに触れて欲しい、なんて、それこそ父親か何かみたいな気持ちに聞こえるけど。
本当に政宗にノーと答えられたら、どんな行動に出るか自分でも分からない。
(矛盾してるなあ)
――この手こそ、“優しいもの”ではないだろうに。
ただ、鉄の爪がついていないというだけで、決して優しいものには成り得ないのに。
傷つけるのが怖くて、などという理由ではない。
粗雑な言葉遣いと裏腹に箱入りで育った彼女を、脅えさせてはいけないと、どちらかと言えば獲物を狙う獣のような考えで――未だ唇にさえ触れていなかった。
この最後の部分だけを言うと、佐助は友人一同に目を剥かれる。あるいは失笑される。または疑いの目で見られる。場合によっては感涙される。
――まったく、いい友達だよ。
と、一まとめで蹴り転がしたくなる佐助であった。
誕生日にはお茶をして、告白紛いの言葉もとりあえずは否定されない。
(そりゃあ嫌だったら会ってもくれないだろうけど)
――Noだったら、なんて仮定はNoではないと言ったも同然。
それでも恋人、と呼べる状況なのか不明瞭な関係を、政宗の周りに他の男を近づけないことで保っているに過ぎない。
今は校風の厳しいお嬢様学校にいる政宗だが、高校を出たら美大に進みたいのだそうだ。志望通りに隣町の学校に決まればいいけれど、と考えて、佐助はひそかに眉を寄せる。
――そんなことより。
「夜はまた、小十郎さんが祝ってくれるの?」
話を変えるそぶりで政宗の世話をしている男の名を出せば、アヒルをもみくちゃにしていた政宗ははたと顔を上げた。
「Ah,夜は伊達の両親と、妹と、小十郎も一緒に食事に行く」
猫のような左目をたわませて、口元は素直にほころんだ。
実の家族とともに過ごすことの少ない政宗は、父上とLunchだ、妹とShoppingだ、という話を嬉しそうに話す。長年アメリカの養父のもとで暮らしていたらしいが、日本に帰ってきてからの家族仲は悪くないのだろうと、佐助も安心してに相槌を打てた。
――ただ、伊達家には伊達家の思惑がありそうだ。
政宗の実家は少し特殊な旧家である。
彼女がそれをどの程度把握しているのか、直接聞いてみるきっかけは未だにない。なぜ佐助が知っているのだと問われても困る。
(とりあえず、右目の旦那が居れば安心か)
政宗の右目の代わりに付き従う片倉小十郎の強面を思い出して、佐助はクツクツと笑った。
――自分を排除しようとするのと同じように、政宗に薦められる縁談もシャットアウトしてくれるだろう。
「何だよ」
「んーん、政宗さんの誕生日、みんな祝いたがってたのに俺様優先してもらったから、怒ってるかなーって」
かすがとかチカちゃんとか、と佐助は共通の友人を数え上げる。
政宗は「Oh,どうりで」とうなずいた。
「かすがのGiftが痴漢撃退用のスタンガンだったから、ちょっと変だなと思ったんだ」
謎が解けたぜ、と晴れやかな顔で言うものだから、佐助も「そうなんだー」と笑うしかない。
(かすが、覚えとけ)
――彼女の肩の力が抜けて、猫みたいな牙を覗かせて笑ってくれたから、今だけはありがたかったけれど。
初めてその手を握ったときの、柔さが佐助には忘れられない。
『結婚してください』
口にするまでそんなことを言う気はまるでなかった。
口をついて出た言葉は、佐助さえ知らなかった本心の三歩先を行っていた。
(この手に囲い込んで…)
守りたいと思ったのか、誰にも触れさせたくないと感じたのか。
――三歩進めば未だに闇だ。
佐助には、闇色の記憶があった。
生まれる以前、いつかどこかで、闇に隠れて生きた記憶。
日の下に姿をさらして、わざと表を見せては巧みに裏を隠して忍ぶ。
――その、同じ日のもとに、彼がいた。
切れ長に吊り上った左目。右目を目立たない眼帯と前髪で隠した顔は、作りが美しいだけに迫力があって――一目で焼きつくような色があった。
名を、伊達政宗。
彼女と同じ目をした男。
(違う、)
未だに佐助は、彼女の方をあの男と同じ、そう感じてしまう。
夕暮れにはまださしかからない、けれど日差しは少し和らいだ道で、彼女を見送った。
政宗は弾むような足取りで佐助から離れたかと思うと、サンダルのつま先でくるりとふりかえる。
Thanks,と唇が動いて、ニイと笑う。
その顔も。
女に生まれついた伊達政宗が、記憶の中の彼のままになるはずがない。
それなのに、否応なしに重なる面影。
「…あ」
手を振って、笑って見せて、彼女がまた歩き出してから気がついた。
ぬいぐるみなんてガキあつかい、と拗ねた風だったから、教えてあげようと思っていた――アヒルの首に巻いたペンダント。政宗さんの誕生日は八月三日、八月三日、とくりかえし唱えていたから、八月の誕生石と聞いてつい買ってしまった――あの明るい緑の石は、アヒルの首輪ではないのだが。
「気づいてくれるかな」
苦笑して橙色の髪を掻くと、じわり、と暑さで汗がにじむ。
――なに焦ってるんだろ、俺。
払いのけるように首を振って、歩き出そうとしても一歩も動けない。
――だって、今踏み出したら。
そのまま駆けていって、抱きしめてしまいそうな気が、した。
一日、また一日と。
――十九歳の彼に近づいていく。
生まれてきてくれてありがとう。
